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映画感想文『アイム・スティル・ヒア』

映画『アイム・スティル・ヒア』観ました。

本作品は1970年代、軍事政権下のブラジルで起きた幸せな家族を襲った悲劇と女性の苦悩を実話を基に描いた作品です。

第97回アカデミー賞でブラジル映画で初となる国際長編映画賞を受賞し、主演女優賞、作品賞にもノミネートされました。

 

 

あらすじ

1970年代、軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員ルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていた。しかしスイス大使誘拐事件を機に空気は一変、軍の抑圧は市民へと雪崩のように押し寄せる。ある日、ルーベンスは軍に連行され、そのまま消息を絶つ。突然、夫を奪われたエウニセは、必死にその行方を追い続けるが、やがて彼女自身も軍に拘束され、過酷な尋問を受けることとなる。数日後に釈放されたものの、夫の消息は一切知らされなかった。沈黙と闘志の狭間で、それでも彼女は夫の名を呼び続けた――。自由を奪われ、絶望の淵に立たされながらも、エウニセの声はやがて、時代を揺るがす静かな力へと変わっていく。

公式HPより引用

 

予告編

youtu.be

 

映画情報

タイトル:『アイム・スティル・ヒア』(原題/英題:Ainda Estou Aqui/I'm Still Here)

監督:ウォルター・サレス

出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ

公開日:2025年8月8日

上映時間:137分

配給:クロックワークス

 

感想

幸せな家族の日常

この映画は1970年代の軍事政権下のブラジルで起きた家族の物語を事実を基に描かれています。冒頭は5人の子供たちとリオデジャネイロで暮らしている家族の幸せな日常が流れていました。誰もが羨む絵に描いたような生活がそこにはありました。ビーチで優雅な時を過ごしたりビーチバレーをして思いっきり楽しむ子供たち、ホームパーティを開いてみんなと談笑する姿はとても眩しく映りました。こんなに幸せそうな家族の様子をたっぷりと最初に描いているのはこれから起きることとの対比であり、観客の感情を揺さぶるための構成になっていると感じました。事前に映画のあらすじを見てから鑑賞したので、これから夫が軍に逮捕されてしまうことは分かった上で観ていたので、冒頭からあのような家族のシーンを見るのは辛く、ずっとこの日常が続いてほしいと思いなながら観ていました。

 

1970年代のブラジルで起こっていた悲劇

冒頭の幸せな家族の様子から一転して夫のルーベンスが軍に連行されてからこの映画の様子は大きく変わっていきました。夫の行方を探していた妻エウニセも逮捕されてしまい、長きにわたって過酷な尋問、監禁を受けることになりますが、その後釈放されます。エウニセはどれだけ辛い尋問を受けようとも決して諦めるような表情、行動は見せませんでした。それこそがまさに映画が伝えたいメッセージなのだと思います。希望を捨てずに小さなことでも最後までやり切った先には明るい未来が待っている。そう感じました。

この時代のブラジルに何が起こっていたのか詳しくは知らなかったのですが、この映画を観て日本以外の国の政治や生活の歴史についてもっと知りたい、私たちは知らなければいけないと強く感じました。本作は、夫ルーベンスと妻エウニセの息子であるマルセロの回想録から着想を得たそうです。

1970年代のブラジルを舞台にした映画作品としてただ終わらせるのではなく、多くの人が過去起きていた悲劇を痛感して理解することが大事だと思います。そして2度と同じ事が起きてほしくないと思いました。

 

母と子の絆を描いた作品

この映画は、軍に連行された夫ルーベンスには焦点を当てておらず、妻エウニセの最後まで希望を捨てずに夫の行方を追いかけた姿に焦点を当てて描いています。そして本作で印象に残っているのは母と子供たちの絆です。夫が連行されてからはこれまでの日常が大きく変わってしまった家族を見ていて胸が苦しくなりました。どんな事が起きても最後まで子供たちには"母親"を全うするエウニセの姿には胸が打たれました。夫が連行されて帰ってこないまま過ごす中でも子供の前では決して弱い姿を見せない。これまでと変わらない愛情を捧げる。その姿が本作の魅力の1つだと思います。

特に印象に残ったシーンは、夫が連行されてから受けた取材で家族写真を撮る際に悲しそうな表情をしてほしいと記者から要求されるのですが、エウニセは子供たちに「みんな笑って」と言いました。これはエウニセができる社会に対しての抵抗を示していると思います。

 

まとめ

冒頭の家族のシーンが最後まで観客の感情を動かす要素となっている構成は素晴らしかったです。エウニセの行動が徐々に時代を大きく動かしていく。この映画は決して明るい内容ではなかったのですが、最後まで諦めない、希望を捨てなければ必ず良い方向へ進んでいくのではないかと勇気を貰える作品でもあります。